「熊座の淡き星影」 1965年

監督;ルキノ・ヴィスコンティ
出演;クラウディア・カルディナーレ、ジャン・ソレル
1月30日 パルテノン多摩

ギルシャ悲劇のエレクトラとオレステスを下敷きにしたミステリー風の作品。サンドラはアメリカ人の夫とともに、ナチスに殺された父の銅像の除幕式のために実家へ帰る。この実家というのが古くて豪奢な邸宅。そこで待っていたのは弟ジャンニ。精神を病んだ母、仲違いしている義父、父の死の謎とともに、しだいにサンドラとジャンニの姉弟を越えた濃密な関係が明らかになっていく。
ジャンニは屋敷とともに滅びていく貴族社会のなかに取り残された人物、これと対照的なのがアメリカ人の夫アンドリュー。その間にいるサンドラは、再会した弟に心を動かされつつも、もう戻れないことは分っている。過去を振り払って、夫とアメリカに行くことを決心する。取り残された者の惨めさ。「死にたくない」とわめきながら、古い屋敷のなかで自殺するジャンニ。「死にたくない」その言葉は、後退していく貴族社会を象徴的に示しているようにも思えた。
そして、モノクロ映像の美しいこと!。サンドラの陰影を強調したメイク、黒い髪、体に巻き付ける白いタオル。ポスターにもなっていたが、水道塔でのサンドラとジャンニの密会の場面。過去の思い出に浸る二人の水に映る影がとても美しかった。

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「白夜」 1957年

監督;ルキノ・ヴィスコンティ
出演;マルチェロ・マストロヤンニ、 マリア・シェル
1月30日 パルテノン多摩

ドフトエフスキー原作。マリオ(マルチェロ)は、橋の上で泣いている女と出会う。ナタリア(マリア)は1年前に再会を約束した恋人を毎晩待っていたのだ。マリオは非現実的な約束だ、信じるなんてバカだとナタリアを口説き、ナタリアも恋の悩みを聞いてくれるマリオに好意を持ちはじめる。たった3日間の男女の出会いと別れ。
うーん、悪くはないけど、良くもない。『熊座の淡き星影』と比べると、ストーリーが冗長だし、あの独特の重厚感がない。というのが、見終わった時の正直な感想。でも、その後で、ヴィスコンティが舞台監督もしていたことを知って納得した。そうだ、演劇を映画にした感じなのだ。短期間、ほとんど同じ場所で繰り広げられる現実味のないストーリー、感情の起伏の激しい女と男、すべてスタジオでのセット撮影で、背景は人工的。舞台なら面白いかもしれない。しかし、なぜ舞台向きの作品をわざわざ映画にしたのか、そこが分らない。
この作品ではマルチェロが光ってた。映画初出演だが、若くはない。遅咲きの俳優だったのね。ストーリーが弛みかけたところで、マルチェロがダンスホールでナタリアと見よう見まねで踊るシーンはけっこう笑えた(^^)。いいアクセントになっていたと思う。マルチェロのダンスが観たい人は、是非どうぞ。

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