「大脱走」 1963年 アメリカ

監督;ジョン・スタージェス
出演;スティーブ・マックィーン ,ジェームズ・コバーン, チャールズ・ブロンソン,
    ジェームズ・ガーナー , リチャード・アッテンボロー 他
2005年8月27日 シネマクラブ企画・夏祭り映画上映会

第2次世界大戦下ドイツ。脱走不可能と言われた捕虜収容所で250人もの集団脱走が決行された。この前代未聞の脱走事件を元に映画化。
「面白いっ!」。他に言うことがない。感想おわり。ヾ(--;)ぉぃぉぃ。
というのも何なので…。ベトナム戦争あたりから姿を消してしまった戦争娯楽映画。困難な作戦をいかに遂行するかを楽しむ映画である。しかし、これは難しいジャンルだと思う。実際の戦争は悲惨だから。楽しむ要素はみじんもないから。この脱走事件でも50人近くが射殺されている。戦争娯楽映画は確かに面白いけれど、私は、成功談を華々しく描く事への疑問があった。だからって、現在のような残虐シーンを必要以上に描く戦争映画が良いってわけじゃないんだけど。
その点、『大脱走』はバランスが良い。前半部分は、困難な作戦を用意周到に積み上げていく面白さが楽しめる。立案家、独房王、トンネル王、調達屋、偽造屋…それぞれ人物の個性が思う存分発揮され、計画が着々と進められる。『荒野の七人』でも思ったことだが、スタージェス監督は人物の描き方がとても上手い。後半部分は、あらゆる手段で逃亡しつつも挫折していく現実の厳しさが描かれる。また、収容所のなかで狂ってしまったり、脱走を目の前に足がすくんだり…弱い人間を描いているところも良い。マックィーンのような命知らずの強い人間の方が、現実には稀だし、極限状況ならばなおさらである。
この映画の"格好良さ"は有名なマックィーンのバイクシーンだけじゃない。失敗してもなお自由を奪うものへ毅然として抵抗する態度が"格好良い"のである。私はラスト、独房で、壁に向かって平然とひとりキャッチボールをするマックィーンの方がずっと格好いいと思った。ボールって何か自由の象徴のような感じがする。
こうした戦争娯楽映画がパタッと作られなくなった理由は、ベトナム戦争まで軍事的・経済的に圧倒的優位を誇ったアメリカの凋落と無関係ではないだろう。戦争娯楽映画は、大国としての余裕がないと作れない。

Cinema Diary Top