「ラブ・アクチュアリー」 2003年 イギリス=アメリカ

監督脚本;リチャード・カーティス
出演;ヒュー・グラント、リーアム・ニーソン、エマ・トンプソン、アラン・リックマン、
    コリン・ファース、キーラ・ナイトレイ、ローラ・リニー、ローワン・アトキンソン 他
2005年1月27日 DVD・自宅ごろ寝シアター 

職業も年齢も違う19人。いろんな恋愛のカタチが並行して描かれ、それらがパズルピースのように組み合わさって、大きなメッセージを描く>"Love Actually is all around us"。
なんて幸せな気持ちになれる映画なんだろう。恋をすれば一国の首相も子供も同じ。相手が自分をどう思ってるか気になり、時には傷つき、思いを伝えるために、どんな障壁も乗り越えようと努力をする。結果がどうであれ、後悔したくないからだ。登場人物たちの健気さ、不器用さ、切ない思いには共感できるし、愛おしく思う。また、恋愛だけでなく、兄弟や親子の愛情、友情を描いたことが、「愛は溢れている」というテーマに広がりを持たせている。普段は近すぎて忘れてしまいがちだけど、愛する人、愛してくれる人が側にいる幸福をしみじみと感じさせてくれる。
演出、音楽の選曲が上手い。1カット、1曲だけで、下手なセリフよりずっと深くその人物の心情を表現してしまう。例えば、冒頭の結婚式と「愛こそすべて」は彼が花嫁をどんなに愛していたかが分かるし、お葬式での「バイバイベイビー」は亡くなった妻が素敵な人だったことが想像できる。首相がノリノリで踊る「ジャンプ」は恋した時の浮かれた気持ち、夫の浮気を疑う妻が聞く「青春の光と影」では、明るくふるまっている彼女の本心が伝わってくる。ラストで、それぞれの恋はビーチボーイズの♪〜君なしの僕がどうなってしまうか、神様だけが知っている〜♪で締めくくられる。洒落てるなぁ。そして、忘れてはいけないのは、ビリーが歌う「クリスマス・イズ・オール・アラウンド」。最初は私も本当にツマラナイ歌詞だなぁと思ったが(笑)、映画が進むにつれ、だんだんと愛する人と過ごすクリスマスを盛り上げる素敵な歌詞に聞こえてくるから不思議。まるでリチャード・カーティスの魔法にかけられたよう。
イギリスを代表する俳優ばかりという豪華キャストも見応えある。なかでもチョイ役だけどローワン・アトキンソン=Mr.ビーンには、おなかを抱えて笑ってしまった。
お砂糖たっぷりのケーキのように甘いかもしれない。でも、映画のなかぐらい甘くたっていいじゃないかと思う。

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「荒野の七人」 960年 アメリカ

監督;ジョン・スタージェス
出演;ユル・ブリンナー、スティーヴ・マックィーン、チャールズ・ブロンソン、
    ジェームズ・コバーン、ロバート・ボーン、ブラッド・デクスター、
    ホルスト・ブッフホルツ
2005年1月5日 新宿ジョイシネマ3 

原作は黒澤明の『七人の侍』。メキシコ近くのある寒村。野党の作物略奪に苦しむ農民たちは、野党を追い払うために7人のガンマンを集めた。
『七人の侍』での重いエピソードを切り落とし、娯楽性を追求した作品。この映画の魅力は7人+悪役のキャラクターがしっかり描き分けられていて、それぞれがキラッと輝いていること。それは俳優によるところも大きい。主役ユル・ブリンナー以外は殆ど無名だったと思うが、みんなカッコイイこと!。控えめな役どころなのにブリンナーより目立ってしまうマックィーン、ひたすらクールなコバーン、ぶっきらぼうだけど優しいブロンソン…。私が一番格カッコいいと思ったのは、コバーンの登場シーンと最期のシーン。演出が狙いすぎだが、コバーンだとカッコよく決まる。多分、他の俳優だったら演出に負けて陳腐になっちゃうだろうな。
どうしても『七人の侍』と比較してしまうが、"武士"を"ガンマン"に置き換えたことに無理がある。『七人の侍』で、なぜ武士たちは何の得もないのに、村のために命がけで戦ったか。命より正義・名誉の死を重んじる武士道があるからだ。『七人の侍』では、武士の生き方と農民が対比されて描かれる。農民は立派な死より、格好悪くても、恥をさらしても、這いつくばって生きる。だからこそ、勘兵衛のセリフ「最後に勝つのは農民だ」が重く響く。弱いようで、逞しくしたたかに生きる農民、それができない武士の哀しさがその一言に込められている。しかし、『荒野の七人』ではガンマンに孤高の人生を語らせるシーンはあっても、やっぱり武士道とは違う。粗っぽい賞金稼ぎをしてきた彼らが僅か20ドルで仕事を引受け、死ぬ覚悟で村に戻る、そこまで彼らを強く突き動かすものが何なのか、説得力がない。「最後に勝つのは農民だ」のセリフも取って付けたような説明がなされ、こじつけのようになってしまう。
しかし、リメークとしては良く出来た作品だと思う。これはこれで十分に面白いし、原作では味わえない"心躍るようなワクワク感"がある。オープニングの音楽♪チャ〜ラ〜ララ〜ララ〜から、映画がはじまるぞっ!と胸が高まり、最後まで一瞬も飽きさせない。最近は、こういう正当派娯楽映画が少ないよなぁ。。。

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