「回転」 1961年 イギリス

監督;ジャック・クレイトン
出演;デボラ・カー、マイケル・レッドグレーブ、パメラ・フランクリン
2005年7月?日 自宅ごろ寝シアター

ゴシック・ホラーの傑作。モノクロ。原作はヘンリー・ジェームズ『ねじの回転』。ミス・ギデンスは大きな屋敷に住む兄妹もとへ家庭教師として雇われた。そこで見知らぬ男女を見たり、兄妹の言動に疑問を感じはじめるが…。
ホラーというと、血飛沫どぴゅどぴゅ、悪魔が派手に暴れたり、明らかにこの世の人じゃない特殊メイクがぬぼーっと現れたり。恐怖をどうだーとばかりに見せる映画がほとんどである。あーつまんない。
しかし『回転』は見せないこと、情報を与えないことで恐怖を煽る。映像では亡霊の女がロングで映るだけ。しかし、ものすごぉ〜く怖い。亡霊そのものより、静まりかえった湖に流れる歌、不気味な子供の表情、家庭教師の見開いた目などが、ぴーんと張りつめたような怖さを生み出す。怖い空気を醸し出す演出が秀逸なのである。さらに、亡霊の正体、兄姉の秘密がすべて明らかにされるわけではない。観客はセリフの断片的情報をつなぎ合わせて、人里離れた屋敷での淫靡な出来事を想像するしかない。想像をふくらませる過程で、観客自らが怖さもふくらませてしまうのだ。
『アザーズ』のdiaryでも書いたが、外国映画ホラーの主役「悪魔」は日本人には怖くない。"悔い"を残して死んだ人間が怖いのだ。『回転』でも、死んでなお生前の欲望を満たそうとする男女にぞっとしてしまう。
『回転』で明らかにされなかった事件は『妖精たちの森』(1971年マーロン・ブランド主演)として映画化された。また『回転』のリメイクとして『ホワイト・ナイトメア』(1992年、英=仏)が製作された。『回転』は『白い肌に狂う鞭』『生血を吸う女』とともに、昨年「ホラー映画ベスト・オブ・ベスト DVD-BOX 」に所収された。ホラー映画の古典と言っていいかも。

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