「ガープの世界」 1982年,アメリカ

監督;ジョージ・ロイヒル
出演;ロビン・ウィリアムス、グレン・クローズ
2005年6月11日 シネマクラブ第34回上映会

小説家ガープの数奇な人生と彼をとりまく人間関係が描かれる。ジョン・アーヴィングのベストセラー小説の映画化。
大好きな映画。正確には覚えてないが3回は観ている。"数奇な人生"という言葉を使ってしまったが、幸田露伴『運命』によれば"数"は運命を意味するらしい。『ガープの世界』は運命論的人生観だと思う。誕生から死ぬまで人生は理屈で説明できない。
欲望のないセックスで誕生したガープが健やかな性を育て結婚し、良き父親になる。一方で、ガープの周囲にはフェミニストの母、性的に歪んだプーや自分の性を受け入れられない元フットボール選手がいる。波のように繰り返し押し寄せる幸福と不幸。相対立するものが渾然一体となっている「ガープの世界」が浮かび上がる。生と死、性愛、マイノリティ…この映画に描かれる問題は決して軽くなく、それぞれが人生で直面している問題は複雑でシリアスだ。しかし、空から人生を俯瞰するような、ふわりとした浮遊感を漂わせながら物語を進めることで、最後には理屈抜きに人生に対する愛しさだけが残る。
この映画のオープニングは、今まで観た映画のなかで一番好き。音楽がビートルズの「When I'm 64」、赤ちゃんが浮いたり沈んだり。不思議な映像が観客を惹きつけるだけでなく、この映像と音楽がラストシーンの伏線にもなる。ガープの「飛んでいるよ」「忘れないで」という最後の言葉が、一気にオープニングに感覚を巻戻させ、観客は映画を最初から反芻する。素晴しい演出。
『ガープの世界』は、実は思い出の映画でもある。学生の頃、映画研究会主催の上映会でこれを上映した。映画館を一日借りて、映画選び、フィルムの手配、ポスター(このポスターは気に入っていたのでよく覚えている。赤ちゃんのガープを抱いている母親のカット、ペン文字で書いたWhen I'm 64の歌詞)やパンフレットづくり、チケット販売、上映まですべて自分たちの手でやった。『ガープは…』は好き嫌いが分かれる作品なので、映画選びから意見が対立し、いざ上映となるとフィルムが繋がらなかったり音が切れたりトラブルだらけ。あの時の苦労が甦ってくる…。

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