「ALWAYS 三丁目の夕日」  2005年 日本

監督;山崎貴
出演;吉岡秀隆,堤真一,薬師丸ひろ子,小雪
2006年1月 TOHOシネマ

西岸良平の漫画が原作。昭和33年、建設中の東京タワーが見える下町を舞台とした人間模様。
高度成長に走り始めた日本。戦争の傷も癒えていなくて、貧しく辛いことも多かったけど、まだ人々が暖かくて、だれもが将来は良くなると信じられた時代。現代から見て、理想化された時代の描き方だが(同時代に生きた人は違和感を感じるのではないか)、こうした映画が世代を問わず多くの人々に受入れられたのは、いかに現在の日本が殺伐として、将来に対する希望が持てないか。ということなんじゃなかろうか。
映画に関わったスタッフの各々の役割が思う存分発揮され、全体として良い映画になったという感じがする。"もはや戦後ではなくなりかけた時代"の捉え方、物語の良さは原作に負うところが大きい。原作のバラバラのエピソードをまとめて、一つの時代像を描き上げた点は脚本の上手さ。失われた風景を再現するVFX技術は監督の腕。そして、何といってもキャストが良かった。軍隊上がりのチョット怖い父親・堤真一も、腰の据わった母親・薬師丸ひろ子も、文学崩れの吉岡秀隆も、飲み屋の小雪も、純情な六ちゃんも子ども達も、ひとりひとりが輝いていた。役柄と俳優のイメージがよく合っていて、俳優がこの映画を一段と素晴しい作品にしたと思う。日本アカデミー賞主演男賞、助演男優・女優賞を獲得したのも納得だな。
久しぶりに涙腺が緩んだ映画だった。ある人に「ベタな演出で泣かせているだけ、あなたが厳しい評価をする韓国映画と同じじゃない」と言われた。うんにゃ、断じて違う。この映画もベタな演出であることは否定しない。でも、特殊な状況で、特別に傷つき不幸になっている人たちじゃないの。鈴木オートの人々はもちろん、茶川もヒロミも淳之介も、あの時代、どこにいても不思議じゃないと思う。普通の人々の普通の生活にある悲しさや嬉しさは、私の中にも同じ感情がどこかにひそんでいて、そこを刺激されるから泣けてくるんだと思う。上手く説明できないけど。

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