「酒とバラの日々」 1963年 アメリカ

監督;ブレイク・エドワーズ 音楽;ヘンリー・マンシーニ
出演;ジャック・レモン、リー・レミック
2006年11月?日 DVD自宅ごろ寝シアター

ジョーは仕事の辛さを紛らわせるために酒を飲む。妻は酒が飲めなかったのに、ひとりの寂しさを紛らわせるために酒を飲みはじめる。ふたりが共有できる楽しみは、酒だけ。夫婦でアル中の泥沼へ。
夫婦でアル中は…悲惨。互いに甘やかして、誘惑し合う。だから、足を引っ張り合って落ちていくのはあっという間だけれど、立ち直るのには、1人より2人でいる方が何倍も難しくなる。妻には更正する意思の強さがない。そんな妻を振り切ってでも更正して人生をやり直すか、2人で廃人か。ジョーには、どっちにしろ身を切るような選択肢しか残されていなかったんだよな。アルコールを妻に覚えさせたのはジョーなのに、彼は彼女を助けてあげることができない。辛すぎる…。
私は登場人物に自分を重ね合わせたりすることはまずないが、この映画は自分と切り離して見ることができなかった。妻は夫以上のアル中になっていく。欲望に弱く、自分をアル中と認めない現実逃避人間だからだ。…それ、私ぢゃん。幸い、体質的にアルコールには弱いが、他の中毒になる可能性は十分にある。実際、気に入ったお菓子があると、飽きるまで食べ続ける習慣がある。その芽を持っているということだ。
主演は、名優ジャック・レモン。彼はもともとコメディ俳優で(この作品以降、社会派映画への出演が増える)、「アパートの鍵貸します」のように、明るく楽しい好青年というイメージが強かった。その彼が、あの演技力でズタボロのアル中になりきったわけだから、ギャップが大きすぎて、アル中の悲惨さ、幸せな生活の崩壊が、より真実味をもって迫ってくる。
そして、テーマ曲:ヘンリー・マンシーニ作曲「酒とバラの日々」は、ジャズのスタンダードなったほどの名曲。映画を知らないと、甘美なバラード。しかし、この映画を知る人には、とても切ない曲。歌詞は大体だけど、こんな感じ。〜酒とバラの日々は、子供のように笑い、閉じかけたドアに向かって去っていく。ドアには"nevermore"と書かれている〜。彼女はドアの向う側へ行ってしまった。あの悲しい名ラストシーンが目に浮かぶ。

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「ダ・ヴィンチ・コード」 2006年 アメリカ

監督;ロン・ハワード
出演;トム・ハンクス、オドレイ・トトゥ
2006年11月10日 シネマクラブ第51回上映会

ルーヴル美術館の館長が殺され、暗号が残されていた。宗教象徴学ラングドン博士は、館長が、孫娘で暗号解読官のソフィーに重要なメッセージを伝えようとしていたことに気付く。世界的ベストセラーの映画化。
原作、上巻の30ページぐらいまで読みました…(^^ゞ。ほとんど予備知識なしで観たけれど、そこそこ面白かった。ただ、ミステリーの謎解きは、腰くだけ。2人が残された暗号を解いていく過程は面白いのだけれど、聖杯伝説にたどり着いてからは、ほとんどイアン・マッケラン演じる宗教学者が一気に解決への道を開くわけで、ラングドンはちょっと冴えない。いったい誰が名探偵なんだっけ?…と思ってしまった。
キリストが人間であり、子孫を特定できるということが、キリスト教を覆す衝撃になることは分かる。非キリスト教文化圏の私がピンとこなかったのは、血の継承者が、"女性"であり、女神崇拝を回復させることにこだわる意味だ(原作では説明されているのかな)。キリストが人間で、子孫が辿れるというだけなら、別に女だって、男だっていいぢゃん…(´・ω・`)。
それで、いろいろ考えてしまった。確かに、アジアでは命を生む性、女神(女性)崇拝は珍しくないが、キリスト教では聖母マリア以外に女性への崇拝がない。それは、女性がイヴの子孫だからか?。イヴは禁断の木の実=リンゴを食べ、それをアダムにもすすめた。この原罪によって、神は人間を楽園から追放し、イヴ(女)には出産の時の苦しみを、アダム(男)には糧を得るために額に汗して土を耕す労苦を与えた。つまり、食べて、産む、人間が種として生きるのに苦しみが伴うのは、イブがリンゴを食べちゃって、あろうことか!アダムにまで食べさせちゃったから。この脈絡だと、女は誘惑に弱く、男を誘惑する性であり、男より罪深く劣っている。ということになりはしないか…。こういう「創世記」を持つ宗教では、女神崇拝はあり得ないだろうなと思う。コードが「APPLE」だったのは、ニュートンがシオン修道会の会員というより、女性の象徴ということの方が重い意味を持つのではないだろうか。継承者が人間で、しかも女性ということは、キリスト教の根本を二重に覆すことになる。
トム・ハンクスは、ミスキャストじゃないかなぁ。もともと学者、名探偵のイメージは薄いし、彼の演技力でもそれをカバーできなかった。同じシリーズの「天使と悪魔」でもトム・ハンクス続投のようだけど、微妙だ…。私がプロデュサーだったら、15年前のウィリアム・ハートで決まり。ヾ(−−; 不可能だってば…。

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