「ドリームガールズ」   2006年   アメリカ

監督;ビル・コンドン
出演;ビヨンセ・ノウルズ,ジェイミー・フォックス,エディ・マーフィ,ジェニファー・ハドソン
2007年10月13日  第62回シネマクラブ上映会

81年に初演され、大ヒットしたブロードウェイミュージカルの映画化。シュプリームス、モータウン・レコードをモデルにしたと言われる。1962年デトロイト。エフィー、ディーナ、ローレルのコーラストリオの才能を見抜いたカーティスは、私財をなげうってプロデュースし、トップスターに押し上げていく。
黒人に対する差別偏見がはびこるなか、黒人マネージャーやミュージシャンたちが、時にはアイデンティティを否定するような選択をし、葛藤を抱えながらも、現在に至るブラックミュージック大衆化への道を切り開いていったことが、よく分かる。そうしたメッセージがきっちり盛り込まれているので、ストーリーがベタベタなのに、意外に心に残る作品になっている。楽曲が素晴らしいのはもちろん、当時のダンス、ファッションもたっぷり。まさに時代を切り取った映画。私は、この辺の音楽に関してはど素人だが、詳しい人ならもっと楽しめるだろう。
そして、これほど音楽で楽しませてくれる映画もあまりない。ミュージカル映画って、いわゆる"ブロードウェイ節"というか、ブロードウェイ独特の健全な曲のノリが既に確立していて、私はチョット飽きちゃったよ…という感じがある。しかし、本作は、種々雑多の音楽・リズムで溢れかえっている。映画全体が、まるで一つのジャズのように。もちろん、セリフ代わりの歌などは、ブロードウェイ節っぽいのもあるけれど、基本的に、楽曲は当時の音楽シーンの再現にこだわっていて、時代とともに音楽の流行が変われば、ソウルから、軽いノリのポップスやディスコへと…いろんなジャンルの曲が次から次へと洪水のように溢れ出てくる。同じ曲を違うアレンジで聴かせてるなどの演出も心憎い。
ミュージカル映画にありがちな、突然歌って踊ってという違和感もあまりなかった。歌とダンスの大部分はステージシーンだし、セリフから歌に移るシーンも自然だ。その人物の気持ちの高揚が、そのまま自然に歌になっていくような感じで演出されている。考えてみると、ブルースやジャズなどのブラックミュージックって、まさにそういう音楽なんだと思う。虐げられ、行き場のない気持ちが、自然と歌リズムになっていったわけだから。
キャスティングも良い。実際トップアイドルで、ルックスも歌声も可愛いビヨンセと、無名新人だけど、パワフルでソウルフル、伝統的ブラックミュージックの流れを感じる歌声のジェニファー・ハドソン。映画の内容そのまんま。ジェニファー・ハドソンは歌が上手いだけではなく、とても新人とは思えない貫禄の演技。二十歳そこそこには見えないよ…。スターのビヨンセを脇に押しやっちゃうほどの存在感は十分にあった。彼女のアカデミー賞助演女優賞は納得。

Cinema Diary Top