「プラダを着た悪魔」  2006年  アメリカ

監督;デビッド・フランケル
出演;アン・ハサウェイ,メリル・ストリープ,エミリー・ブラント
2007年9月?日  DVD  自宅ごろ寝シアター

ジャーナリスト志望のアンディ。ファッションセンスゼロの彼女が、一流ファッション誌の編集長ミランダのアシスタントとして採用されるが…。
"ジャーナリストになるための腰掛け"程度の甘い考えで就職した女の子が、仕事の厳しさを知りながら成長していく姿には共感できる。大学の成績が優秀でも、仕事では違った頭の良さが求められる。やりたい仕事やプライドはあるのに、雑用ばかりの日々。そのギャップに悩みながらも、興味に関わらず、自分の飛びこんだ世界を一から勉強する。さらには仕事の人脈を築くことで、不可能なことも可能にし、先を読んで行動できるまでになる。一見、ジャーナリストとは無関係な仕事のようでも、彼女は何処へ行っても通用する仕事能力を身につけていく。アンディの社会人1年目の悩みや苦労は、多くの人が、程度の差はあれ、経験することだと思う。しかも、舞台はファッション業界。どうやって流行がつくられるのか、ファッション誌がデザイナーやブランドをどう育てるのかなど、なかなか知ることができない華やかな業界人の仕事をのぞき見する楽しさもある。
しかし、底が浅さも目立つ。女性の仕事と私生活のバランスが、もう一つの大きなテーマだと思うが、なぜ女性が一線で活躍することに無理解な男しか出てこない?。ミランダの夫も、アンディの恋人も。あれでは、女は仕事を取るか、私生活を取るかの二者択一しかないと言ってるようだ。アンディは、人間関係や私生活を犠牲にする仕事に疑問を持ち、ミランダの元を去っていく。しかし、アンディがジャーナリズムのようなハードな業界で仕事を続ける限り、人間関係の軋轢は避けられないし、あの恋人では上手くやっていけないだろう。まったく、女が将来を切り開こうと頑張ってるのに、ボクをかまってーなんてわがままばかりいいやがって。ファッションに関してもそうだ。ブランドばかりでハイセンスな洋服を着こなすお洒落な人(超高額所得者か、アンディのような業界人でないとまずムリ)か、ファッションを否定する、または全く関心のない質実剛健派の二つのタイプしか出てこない。話は分かりやすいんだけれど、単純化しすぎ。
ミランダ演じるメリル・ストリープは余裕の演技。アンディ役のアン・ハサウェイもキュート。でも、いちばん印象に残ったのは、もうひとりのアシスタントのエミリーを演じたエミリー・ブラント。役柄もスパイスが効いていた。ファッションが好きで好きでたまらなくて、アンディより仕事に情熱がある。好きな服を着られることに純粋に喜びを感じているところがかわいい。ミランダとアンディの中間的立場で、第三者的視点でミランダの存在、ギョーカイの掟、アシスタントの仕事などを観客に伝える役回りもある。なかなか芸達者な女優さんで、細かい演技でクスッと笑わせてくれ、ミランダとアンディを引き立てた。これからの活躍がちょっと楽しみ。

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