「ラジオ・デイズ」  1987年  アメリカ

監督;ウディ・アレン
出演;セス・グリーン,ミア・ファロー,ダイアン・ウィースト,ジュリー・カヴナー
2009年1月?日  DVD  自宅ごろ寝シアター

dvd ラジオが生活の中心だった頃。第二次世界大戦中のニューヨーク、ロッカウェイに住むユダヤ人家族の人間模様を、ラジオから流れる当時のヒット曲をバックに少年ジョーの目を通して描く。アレンの自伝的作品。
昔を振り返る時、アレンも冒頭で言うように「美化」され、事実は歪む。しかし、その歪み方が、やっぱりアレンだけあってユニーク。一家の決して裕福ではない暮らしも、ビーおばさんの失恋も、悪さして叱られた思い出も、人とは違った切り口で、思わずクスッと笑える話にしてしまう。そして、ラジオは音だけの情報だから、そこにちょっと変な想像力が入り込むところが面白い。例えば、後のラジオスターになるミア・ファローのエピソードは、家族の話とは関係ないのだけれど、ラジオ業界のどこまでホントかウソか分からない伝説として面白可笑しく語られたり、野球選手が腕や足を失っても、試合に出つづけたというあり得ないラジオネタ話を、素直にそのまま映像にしてみたり。人々がどんなにラジオに夢中だったかが伝わってくる。
自作品に出演することが多いアレンだが、本作には出演せず、ナレーションを担当している。このナレーションが良い!。作品の98%は、アレン得意の軽妙な語り口、チョットひねくれた表現で、思い出話が次から次へと懐かしげに、楽しげに語られていく。しかし、冒頭と最後のわずかなナレーションで、そういう時代が過ぎ去ってしまったことの寂しさをふわっと漂わせる。冒頭では「雨のロッカウェイが美しく記憶に残っているのです」と情緒たっぷりに過去へと導き、最後はもういなくなった人たち、遠くなっていく思い出をストレートに言葉にする。たったこれだけで、コメディドラマに、あたたかさと切なさがじわーっと滲んでいくのだ。こういうさりげない演出は、泣いてくれとばかりにお涙頂戴エピソードをベタベタならべた『Always−三丁目の夕日』なんかより(この映画嫌いじゃないけど)、ずっとセンスが良いし、好みである。
ラジオの記憶は不思議だ。♪チャ〜チャラッチャ…「ビタースィート・サンバ」(オールナイトニッポンのテーマ曲)を聞くと、青春時代を思い出してしまうのは、私だけではないだろう。古いテレビ映像を見ても懐かしいな〜と思うだけだが、ラジオパーソナリティの声や、音楽を聴くと、その時代のさまざまなことが思い出される。きっと、ラジオには行動がともなっているからなんだろうな。ラジオを聞きながら、受験勉強をする、デートをする、家事仕事をするとか。一部屋にテレビ、PCが当たり前になりつつ時代、さみしいが、こういうラジオの思い出はだんだんなくなっていくのかもしれない。

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